移植を終えて
パンパンに膨らんでいる膀胱を抱えながら、ベッドで横を向いて寝ていました。というのも、仰向けに寝ると、たまりにたまった尿に、膀胱が圧迫されてつらかったからです。(当時の移植は、尿をパンパンにためてから行うというものでした。)
移植されたばかりのお腹の上に、そーっと手を置いてみました。
「今、私のお腹のなかには、とても小さな赤ちゃんがいるんだなー。」何だか、とても不思議な気分になりました。
また、言葉では言い表せないほどの喜びが、あふれ出してきました。
幸せってこういうことなのか
すると、不思議なことが起こり始めたのです。
お腹のあたりから、薄いピンクのベールのようなものが、“ふんわり”と流れ出てきました。
そして、それが、私をすっぽりと覆ってしまいました。
そのピンクのベールは、ゆらゆらとやさしく揺れています。そこには優しくて温かくてキラキラしたものが、満ち満ちていました。
なんともゆったりとした、不思議な気分です。
そんなやわらかな空間に、どっぷりと浸っていました。全身で幸せを感じていました。
「綺麗だなー、幸せだなー、ずーっとこの中にいたいなー。」
今まで生きてきて経験した、たくさんの嫌だったこと、辛かったこと、悲しかったことが、ちっぽけなものに思えました。
すべてのことが、許せるような気分でした。(法事には出席しない 参照)
ピンクのベールは、しばらくの間ゆらゆらと揺れ続けていました。
ひょっとして「忘れられていた?」
看護師さんが、「時間がくれば呼びに来ます。」とおっしゃっていたのですが、なかなか呼びに来てくれません。
「そろそろ、膀胱が限界だなー。早くトイレに行きたいなー。」と思いながらも、その揺れるベールの中にずっといたいという思いもありました。
(病院の)カーテンの外で看護師さんの「あ、そうだった!」という、つぶやくような声が聞こえてきました。(←ひょっとして私、忘れられていた?)
「モリモリ母さん!」そう呼ばれ、ベッドを仕切っているカーテンが、ゆっくりと開けられていきました。
私を覆っていた薄いピンクのベールのカーテンは、いつの間にか消えていて、そこにはもうありません。
看護師さんに促され、ようやくベッドから起き上がる事ができ、無事トイレへと行く事ができたのでした。
つづく・・・
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